第3章 【期待と不安を胸に】
コンパートメントの入り口に召喚の杖を立て掛け、ネサラをカゴから出してやると、クリスは毎年同じように壁に頭をもたせ掛けて眠ろうとした。しかし父の言葉が気になって眠れない。
いったいホグワーツで何があるんだろう。そう言えば持ち物にドレスローブと書いてあったから、クリスマスにダンスパーティでもやるのだろうか。だとしたら、父の考えは全くの見当違いだ。パーティ嫌いのクリスが、わざわざホグワーツに残ってダンスパーティに出るわけがない。
だったら家で父様と一緒に、大人しく母様のお墓参りをする方が何倍も良いに決まっている。クリスは軽くため息を吐いてネサラに問いかけた。
「なあネサラ、父様はなんて言おうとしたと思う?」
ネサラは「さあ?」とでも言う様に器用に首を傾げてみせた。
「そうだよな、お前に言っても分からないよな」
それから時間つぶしも兼ねて、クリスはもしかしたらハリー達が違うコンパートメントにいるかもしれないと思って列車内を探索してみた。するとクリスのコンパートメントから2つ離れたところにドラコ達が座っている事に気づいて、クリスはそっと息を殺して通り抜けた。
ドラコと会ったら、またダンスパーティで一緒に踊れと言うに決まっている。面倒くさい事は極力避けておきたい。
ひと通り列車内を見たが、ハリー達の姿は無かった。やはり今年も出発ぎりぎりに来るのだろう。クリスはまたドラコにばれない様そっと自分のコンパートメントに戻った。
それから何分過ぎただろう。窓からホームを見ていたら、ハリー、ロン、ハーマイオニーがトランクを積んだカートを押して人ごみをかき分けているのが目に入った。何でここまで来たのか知らないが、3人ともずぶ濡れだった。クリスはホームに降りて、ハリー達3人を迎えに行った。
「ハリー、ロン、ハーマイオニー!こっちだ!!」
「クリス!久しぶり、休暇はどうだった?」
「話しは後だ、とにかく荷物を運んだ方が良い。もうすぐ出発するぞ!」