第22章 【水面下での争い】
しかし1週間後、開き直ったハーマイオニーが夕食の席でこう言った。
「つまり、前々から準備していれば問題ないと言うわけよね!」
教科書をどっさり山の様に積み上げながら、ハーマイオニーは夕食を取っていた。器用に本を立て掛けながらマッシュルームたっぷりのクリームシチューを口にする姿は見事としか言えない。
半ば感心する最中、シリウスに手紙を託したふくろうが戻ってきた。足に手紙が括りつけられている。
ハリーが急いで外すと、ふくろうはさっさと飛び去って行った。
「なんて書いてあるの?」
「ちょっと待って、えーっと――ホグズミード郊外から少し出た細い道に柵が立っている。(ダービッシュ・アンド・バングズ店の先だ)土曜日の午後2時にそこに来て欲しい。食べ物を出来るだけ沢山持ってくる事。――だって」
「もしかして、ホグズミードに戻ってきたってことないよね?」
「まさか、ないよ……」
「とも言い切れないのがシリウスだな」
決め手をクリスが打った。
確かに去年の行動を見るに、シリウスに怖い物無しと言って良いほどのハチャメチャな行動っぷりだった。しかも今ホグズミードにディメンターはいない。だが警備が手薄になっていたとしてもシリウスは有名過ぎる。もし人に見られでもしたら1発でアズカバンに逆戻りだ。
「シリウスに幸あらん事を」
「もしくは一辺の常識があらん事を」
非常識すぎる大人に、子供4人はそろって祈りをささげた。
夕食が終わって、談話室に戻ろうとした時だった。廊下の向こう側にセドリックの姿を見付けた。いつも通り取り巻きに囲まれている。少し迷った末、クリスはハリー達に先に行っているよう伝えると、セドリックに声をかけた。
「セドリック!」
「ん?やあ、クリス!皆、ちょっとごめん」
取り巻きから少し離れると、セドリックはクリスのすぐ側まで来た。セドリックは身長が高く、顔を見ようとすると見上げてしまう。
「どうしたの?何か用?」
「いや、用って程でもないけど……第2の課題、無事通過して良かったな。おめでとう」
「ありがとう。これでハリーと同点だ。君は――どっちを応援してくれる?」