第22章 【水面下での争い】
セドリックの意地の悪そうな笑顔に対し、クリスは怯むことなく平然と答えた。
「ハリーに決まってるだろう。セドリックにはもうチョウ・チャンがいるじゃないか」
「あはは、気づいてた?でも、最初にダンス・パーティに誘ったのは君だよ。僕の誘いを断っておいて、他の相手とパーティに出たって聞いた時はショックだったなぁ」
「それは、まあ、タイミングが悪かったと言うか――スマン」
「ははっ、いいよ気にしなくて。でも出来れば僕の事も応援してほしいな。ハリーの10分の1でも良いから」
「じゃあ特別に、ハリーと同じくらい応援してあげよう。それならどっちが勝ってもホグワーツの勝利に間違いなしだ」
だろ?といってクリスが口の端を持ち上げると、セドリックは満面の笑みで笑い返した。
本当に不思議だ。どうしてセドリックといると、時間を忘れて話しに夢中になってしまうんだろう。初めは不満のはけ口が無い者同士だからだと思っていた。
だが今は違う、セドリックにはチョウがいるし、クリスにはハリー達もいるしドラコもいる。それなのに、セドリックと話したいと言う気持ちは絶えない。もし兄妹がいるとしたら、こんな感じなんだろうか。楽しいんだけど、どこか落ち着いていて――。
「――セドリック!」
クリスとセドリックが話していると、階段の上からセドリックを呼ぶ女の子の声が聞こえた。黒髪が美しいセドリックのガールフレンドのチョウ・チャンだ。
この時、何故か知らないが、この場に居てはいけないような気がしてクリスは焦った。
「何しているの?」
「ああ、何でもない。クリスとちょっと立ち話していただけだよ」
「悪いな、もう行くから。お休みセドリック」
「ああ、お休みクリス」
早口でまくし立てセドリックに挨拶すると、階段を上がり、チョウの横を通り過ぎた。その時、クリスは背筋がぞくっとするような寒気がはしったのを感じた。
思わず振り返ったが、もうチョウは階下に降りてセドリックと一緒に廊下の向こうに行くところだった。
クリスにはまだ理解できなかった。これが女の嫉妬であると言う事を――そしてセドリックに、何かしらの感情を抱いているという事を。