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ハリー・ポッターと闇の姫君

第22章 【水面下での争い】


 それから間もなく、フラーがたった一人で浮かび上がってきた。いつもきれいに流している髪はぐちゃぐちゃで、制服もボロボロで傷だらけだ。
 きっと何かに襲われたのだろう。マダム・マクシームが傍に行って慰めているが、早口のフランス語で何か喚いていて聞き取れない。もう1度湖に飛び込もうとするフラーを、マダム・マクシームが止めている。
 と、その時頭をサメに変身した不格好なパンツ一丁の男がハーマイオニーを担いで水から上がってきた。
 きっとあれがクラムだ。となるとあと一人は――。

「ハリー、頑張れー!!もう時間が無いぞーー!!」

 3人とも戻ってきたんだ。ハリーもきっと直ぐ戻ってくるはずだ。しかし5分経っても、10分経っても水面に泡ぶく1つ立つ事は無かった。

 いやな予感が胸をよぎる。クリスはドラコの時計で時間を見た。なんと時間が開始から1時間以上たっている。それじゃあ、ハリーとロンは……?
 クリスの瞳から涙がこぼれ落ちそうになった。それを横で見ていたドラコが、ぎょっとしてあわてて慰めようとした。

「おっ、落ち着くんだクリス!あのポッターの事だ、殺しても死ぬわけないだろう?だから君はドンと構えてろ」
「でもっ、歌では時間までに見付けなければ、もう取り返せないって……」
「今年はあのダンブルドアが居るんだ、時間が過ぎたって生きている筈さ!」
「そうかな……?」
「当たり前だろう?僕の言う事が信じられないのかい?」
「……信じる」

 それからクリスはドラコのローブの裾をぎゅっと握った。ドラコは安心させようとその上から手を重ねて来た。クリスはそれを振りほどく事無く、余計に握る手に力を込めた。
 今やクリスの手は石の様に固くなっていた。その上から、ドラコのぬくもりを感じる。クリスは目頭が熱くなってくるのを必死に耐えながら湖を睨みつけていた。

 それから5分過ぎ、10分過ぎただろうか。湖面に何かが蠢くのが分かった。その瞬間、ハリーがロンと小さな女の子を両腕に抱えて湖から顔を出した。

「ハリーーーッ!!ローーーンッ!!」
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