第22章 【水面下での争い】
昨日の夜中まで良い策が何も見つからないまま、朝を迎えてしまったのだ。もしかし手数料クリスの知らない内に、何か良い策を見付けたかも知らないが、その可能性は非常に低い。
しかし、ハリーも馬鹿ではない。勝機の無い競技に出るはずがないのだが。
クリスは祈った。とにかく何でもいい。3人が無事ならそれで――。
その時、クリスの頭にピンときた。大切な友人、大切なもの。もしかしたら、マーピープルの歌が言っていた『大切に思うもの』とはロンとハーマイオニーの事じゃないだろうか。
ハリーの大切な人と言えば友人のロンとハーマイオニーだし、となると自分は……?自分はハリーの大切な友人ではないのだろうか。
その時、またしてもクリスの頭に閃きがはしった。クラム……そう、クラムだ!きっとクラムの『大切に思うもの』がハーマイオニーなんだ!1人につき1人ずつの人質。それなら辻褄があう。
なら、1時間を過ぎたらその時は――もう永遠に 取り返せない――そんな不吉な歌詞が頭をよぎり、クリスはぶんぶんと頭を振った。そんな事あって良いわけがない。クリスは届かないと知りつつも湖に向かってハリーの名前を叫んだ。そして祈った。どうか全員無事に帰って来るようにと。
何もできずただ無事を祈っているだけと言うのは苦痛で仕方なかった。
いつだって4人で力を合わせて困難に立ち向かってきた。しかし今はただ1人で無事を祈るだけだ。
隣りに居るドラコは時計を見ながら「ああ、もうすぐ30分が経つねえ」だの「この調子じゃ他の奴らも駄目かもしれない」だのと不安をあおって来る事ばかり言ってくる。
その度、クリスはキッとドラコを睨みつけていたが、時間が経つにつれ不安で視界が暗くなってきた。クリスはもう見ているのも辛くて目をぎゅっと閉じて胸の前で手を組んでいた。
「おい、クリス、見ろ!セドリックだ!!」
大きな歓声が聞こえてきたと思ったら、ドラコがクリスの肩を揺らした。目を開くとそこにはチョウ・チャンと一緒に湖面から頭を出しているセドリックの姿が見えた。良かった、少なくともセドリックとチョウは助かったんだ。
後はハリーがロンとハーマイオニーを連れて来れば良い。クリスはやっと息を吐いた。