第21章 【Look for it】
クリスの体を嫌な予感が駆け巡る。クリスは急いで女子寮の階段を上ると、扉を開けた。目の前に広がっていたものは、カーテンが引かれたベッドが2つと、引かれていないベッドが2つ。
1つはクリスのベッドで、もう1つはハーマイオニーのベッドだ。傍から見て、昨夜帰った形跡はない。クリスは勢いよく談話室に戻り、今度は男子寮の階段を上ってハリーとロンの部屋を開けた。すると、ガランと空いたベッドが2つ。
それを見て、クリスは頭のてっぺんから血がサーッと引いていくのを感じた。
「ん~……だれ?」
シェーマスが寝ぼけながら問いかけてきたが、クリスは答えることなく扉を閉めて階段を駆け下り、3人の姿を求めてありとあらゆる所を探した。
途中すれ違う生徒にハリー達を見かけなかったか聞いたが、皆そろって首を横に振った。
朝食の時間になると、クリスはフレッドとジョージに詰め寄った。だが2人は「本当に知らない」と言って「ハリーも一緒に消えるなんて気になるな」と首をかしげていた。残る怪しい人物と言ったら――
「ドォォォラァァァコォォォ!!!」
大広間前のロビーで、ドラコの姿を見付けるとクリスは闘牛の様に突っ込んでいった。そして襟首をつかむと鼻息荒く問い詰めた。
「お前だろう!?ハリーをどこへやった!?ロンは無事なんだろうな?ハーマイオニーに傷1つつけてみろ、百倍にして返してやるぞ!!!」
「く、くるしいぞクリス……いったい何のことだ!?」
「し……しらないのか!?お前も……?」
クリスはしぼんだ風船のように、しおしおと力が抜けてその場に座り込んだ。
「お、おいクリス?」
「……ないんだ」
「何がだい?」
「ハリー達がいないんだ。ロンも、ハーマイオニーも……昨夜別れたっきり姿が見えないんだ!」
クリスの赤い瞳に涙がこぼれんばかりにあふれ、宝石のように輝いている。長年付き合ってきたドラコですら、こんなクリス見た事が無い。きっと寝不足とショックで頭の回路のどこかが壊れてしまったんだろう。
うずくまるクリスを何とか立たせ、ドラコは取りあえずテーブルに座らせ紅茶を注いだ。
「ほら、これを飲め。少しは気分も落ち着くはずだ」
「……あぁ」