第21章 【Look for it】
それから閉館までの時間は静かなものだった。フレッドとジョージという台風のおかげで気分も一転、再びやる気を取り戻したが、これと言った呪文が見つからないまま時間だけが過ぎて行った。
8時を過ぎると、マダム・ピンスが「早く出て行け」と言わんばかりに明かりを消し始めたので、ハリーとクリスは出来るだけ多くの本を持って図書室を後にした。
直ぐに帰って来ると思っていたロンとハーマイオニーは、大広間には現れず、結局12時過ぎまで、ハリーとクリスの2人で何か良い策はないか探した。
第2の課題まであと数時間しかない。そうは思っていても、暖炉の日がパチパチ燃える心地よい音を聞いている内に、クリスはいつの間にか『これであなたも今日からレンジャー~水上編~』の本に頭を乗せて眠ってしまった。
「そっか……僕の為にがんばってくれたもんね。ありがとう」
「…ん……」
夢うつつの中、ハリーがそっと抱きしめてくれたような気がした。自分と大して身長が変わらないにも関わらず、意外とたくましい腕と暖かい胸に包まれて、それがものすごく安心した。
柔らかいソファーの上に寝かされると、クリスはもう夢の中の住人だった。
あの光あふれる花畑の中、クリスに向かって呼ぶ声がこだまする。ルーピン先生か、と思ったが違う。あれはハリーだ。
やっぱりあれはハリーだったんだ。ハリーこそが運命の人だったんだ。逆光の中、黒髪の少年に向かって走って行くと、だんだんと輪郭がはっきりしてきた。
風にそよぐ黒髪、不敵に笑う赤い唇、そして――血のように赤い二つの瞳。
――違う!足を止めたが、もう遅い。少年の手足が蛇の様に伸びてきてクリスを掴んだ。
「つかまえたぞ、闇の姫君!!」
「うわあぁっっ!!!」
飛び起きると、そこは暖炉の前のソファーで眠っていた。
今の夢は何だったんだろう。だたの夢?それとも――クリスは恐る恐る左手首の痣を見た。すると、どこからどう見ても色濃くなっている。ダンス・パーティの時に比べてさらに。クリスは咄嗟に左手首を隠した。
そうだ、ハリーはどうしたんだろう。それにハーマイオニーとロンは帰ってきたのだろうか。テーブルの上には本が散乱していて、クリス以外の誰もいない。
「ハリー……?ロン?ハーマイオニー?」