第21章 【Look for it】
ふくろうを見送るハリーの背中が、寂しそうに見えたのはきっと気の所為ではなかっただろう。だが残念ながら、クリスにはかけてやる言葉が何も思いつかなかった。
翌日、4人は休み時間は勿論、空いている時間は全て図書館で過ごした。とにかく何とかして30分でも良いから、水の中に居られる方法を探し出そうと躍起になっていた。
しかし役に立つ呪文が見つからないまま、時間は無情に過ぎていくだけだった。夕方になり、やがて日が落ちて夜になっても、これと言った解決策が見つからなかった。
「諦めも肝心だよね」
分厚いかび臭い本を閉じながら、ロンが呟いた。その隣では、ハーマイオニーが百科事典ほどもある分厚い本を血走った眼で必死に睨んでいる。
「絶体何か方法はあるわ」
細かい字をもの凄い速さで追いながら、ハーマイオニーは顔も上げずに言った。その様子を見ながらロンは「イカレてる」と小さい声で呟いた。
4人とも体力も集中力も限外に来ていた。ロンは諦めて本の上に突っ伏しているし、ハリーは欠伸をしながらパラパラページをめくっている。クリスはこっくりこっくり舟をこいでいた。
「僕、シリウスみたいに『アニメ―ガス』になる方法を学んでおけば良かった」
「良いね。それなら好きな時に魚になれる」
「もしくはカエルだ」
「あのねえ、『アニメ―ガス』になるには十分な訓練と時間が必要なのよ。それに魔法省の許可や登録なんかも必要だし、一夜で為れるわけがないわ!」
「ハーマイオニー、軽いジョークだよ」
ハリーは疲れ切った声で答えた。ハーマイオニーは半分ヒステリックになっている。今までの人生の中で、彼女をこんなに悩ませた問題があっただろうか。
もしハーマイオニーが課題をこなすのなら問題ないだろう。どんな魔法も彼女にかかれば一発だ。しかし相手はハリーだ。ハリーが、どうにかして、自分で、課題を、解決しなければ意味がない。
だが見つかるのは、沼や池を干上がらせる『干ばつの呪文』や、水をはじく『防水の呪文』 など、あの湖を相手にしては焼け石に水といった呪文ばかりだった。とても湖の中で1時間も潜っていられる呪文など見つかりはしない。