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ハリー・ポッターと闇の姫君

第20章 【半巨人】


 するとゆっくりと扉が開いた。ハーマイオニーの顔に笑顔が戻った。と、思ったら扉を開けた人物を見て、ハッと息をのんだ。
 なんとそこに立っていたのはハグリッドではなくダンブルドア校長だった。校長はニコニコ笑って4人を小屋の中に入れた。

 ハグリッドは椅子に座って、大きなマグカップを前に、深く沈んでいた。泣きはらした目は真っ赤に腫れていて、髪の毛はもつれ、ヒゲは手の付けようがないくらい伸び放題だった。ハリーが「やあ」と声をかけると、ハグリッドはベッドカバーで涙をぬぐって「おう」と答えた。

「もうちょっと紅茶が必要みたいじゃな」

 ダンブルドアは杖をくるくるっと回すと、紅茶が4つ、それに美味しそうなクッキーとケーキが現れた。狭い小屋に6人と1匹が座ると少し窮屈だったが、温かい空気がそれを補って有り余っていた。

「ハグリッド、儂の気の所為ではないと思うが、ミス・グレンジャーの言葉が聞こえておったじゃろう?あの勢いから察するに、4人はまだまだお前さんと親しくしたいと思っておる様じゃが?」
「そうよハグリッド、あんなクソ――すみません先生――あの女の言う事なんか気にしちゃ駄目よ」
「そうだよ、ハグリッド!母親が何だよ!僕の唯一の親戚なんてあのダーズリー一家なんだよ?」
「良い所に気がついた、ハリー」

 半月形の眼鏡の奥から、キラキラ光るブルーの瞳でダンブルドアはハリー達を見た。

「人間は生まれてくる親を選べぬ。そうそう、儂の兄弟のアバーフォースはヤギに不適切な呪文をかけて起訴されたが、どうしたと思う?翌日も堂々と仕事をしておったわい。もっとも、文字が読めたかどうかは定かではなかったから、勇気があったかどうかは別問題だがな」
「戻って来てよ、ハグリッド。僕達さびしいよ」

 ハグリッドはボロボロと涙をこぼし、ベッドカバーで地鳴りのように大きく鼻をかんだ。ダンブルドアはマグカップに入っていたお茶を飲み干すと、そっと立ち上がった。

「辞表は受け取れぬぞ、ハグリッド。明日の朝はわしと一緒に朝食じゃぞ、約束じゃ。それじゃあ皆、また明日会おう」
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