第20章 【半巨人】
ダンブルドアは帽子をちょっと上げて挨拶をすると、別れ際ファングの頭を撫でてから小屋を出て行った。パタンと扉が閉まった途端、堰を切った様にハグリッドが大泣きを始めた。
ハーマイオイーとハリーが丸太のような腕を撫でて慰めた。どの位そうしていただろう、やがてハグリッドはゆっくりと顔を上げ、またベッドカバーで涙を拭いて鼻をかんだ。
「偉大なお方だ、ダンブルドア先生は……」
「うん、そうだね」
「皆の言う通りだ、俺が馬鹿だった。あんなクソ女の記事にビビッて、踊らされて……俺のお父ちゃんが生きていたらきっと恥ずかしいと思ったに違いねぇ。……そう言えば、まだ皆には俺のお父ちゃんの写真を見せた事が無かったな」
ハグリッドは引き出しから写真立てを引っ張り出すと、それを4人に見せた。
ハグリッドと同じクシャクシャの髪に真っ黒い目をした小柄な魔法使いが、ハグリッドの肩に乗ってニコニコ笑ってこちらに手を振っている。ハグリッドは父親と同じくクシャクシャだが髪も今より短く、ヒゲが無くてかなり若く見える。
「これはホグワーツに入学してすぐ撮った時だ。――懐かしい、親父は大喜びでなぁ。ほれ、俺のおふくろは……あれだっただろう。それに俺は魔法も下手だったし、魔法使いにはなれないと思っていたから……でも親父は俺が2年生の時に逝っちまった。その方が良かったのかもしれねぇ。なんせ退学するところを見なくて済んだからな」
「ハグリッド……」
「ヘンッ!生まれが何だって言うんだ。この世にはそんな事ばっかり気にして自慢したり蔑んだりしている奴がいるが、俺は俺だ!胸張って生きて行けば良い。俺の父ちゃんもいつもそう言ってた」
その言葉は、驚くほどスッとクリスの心に入って優しく溶け込んだ。
――自分は自分、胸を張って生きて行けば良い。その通りだ。例え父親が元『死喰い人』だったとしても、腕に『例のあの人』が付けた『闇の印』があったとしても、私は私だ。
クリスはそっと目を閉じ、ハグリッドの言葉を胸に刻みつけた。