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ハリー・ポッターと闇の姫君

第20章 【半巨人】


 クリスはあまりのショックで体が固まり、言葉が出てこなかった。何も言えないクリスに代わり、突然、リータ・スキーターの顔にバタービールがぶっかけられた。咄嗟に振り返ると、ハーマイオニーが空になったジョッキを手にしている。

「この最っ低の下衆女!」

 まるで時が止まったかのように、店内の人間全員が沈黙した。マダム・ロスメルタでさえ、唖然として酒を注ぎ続けて溢れている事に気づいていないほどだった。
 水を打った様な静寂の中、最初に沈黙を破ったのはハーマイオニーがジョッキをテーブルに叩きつけた音だった。

「こんな女、相手にしているだけ時間の無駄よ。行きましょう皆」

 そう言うと、ハーマイオニーはハリー、ロン、クリスの背中を押して『三本の箒』から出て行った。あまりの出来事に、頭の処理が追いついていかないクリスに代わって、ロンが第一声を放った。

「不味いよハーマイオニー、次は君が狙われるぜ?」
「あら?私の親は『日刊預言者新聞』なんて読まないから別に良いわ。それよりあの女よ!最初はハリー、次はハグリッド、その次はクリスだなんて――どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのかしら!」
「いや……でも、あの女の言っている事は半分当たっているから。私の父様が元『死喰い人』だって言うのは本当だし……」
「弱気になっちゃだめよ!クリス!親の過去がどうであれ、貴女は立派な人よ!」
「あ……ありがとう、ハーマイオニー」

 クリスは涙が出そうだった。ずっと長い間『グレイン家の娘』として見られてきたにクリスとって、この言葉は救いの言葉だった。

 それからハーマイオニーは先頭を切ってズンズン進み、町を出て帰り道をひたすら早足で駆け抜け、校門をくぐり、校庭を突っ切ってハグリッドの小屋までやって来た。そして乱暴に戸を叩いた。

「ハグリッド!居るんでしょう!?ここを開けて!!彼方のお母さんが巨人だからって誰も気にしてないわ!だってそうでしょう?彼方は彼方よ、それ以上でもそれ以下でもない!!リータ・スキーターみたいな外道に道を譲っちゃだめよ!気をしっかり持って!!」
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