第20章 【半巨人】
声をかけようと思ったが、チョウ・チャンと手を繋いで楽しそうに話していたので、クリスは何も言えず上げかけた手を下ろした。
何故だろう、さっきまでスキップするほど楽しい気分だったのに、今は胸にぽっかりと穴が開いた気分だ。
トボトボと大広間に行くと、ハリー達がガツガツ昼食をかっ食らっているところだった。また『反吐』関連の事件だろうかと思ったが、そうではなかった。
「いったいどうした?」
「見てよ!これっ!!」
ハリーが1枚の新聞の切り抜きを差し出した。そこにはこう書かれていた。
【ダンブルドアの異常過ぎる人選】
本誌の特派員、リータ・スキーターは「ホグワーツ魔法学校」の校長「アルバス・ダンブルドア」の異常なる人選について意見を発した。
本年度から、ダンブルドア校長は『闇の魔術に対する防衛術』の教師に「マッド・アイ」と呼ばれる年寄りで頭が固く融通が利かない、元『闇祓い』のアラスター・ムーディを指名した。
この「マッド・アイ・ムーディ」と言う人物、昔は腕利きの『闇祓い』だったらしいが、今では動くもの全てに呪いがかかっていると思い込んでいるただの呆けた年寄りだ。
だが、異常な人選はこれだけは無かった。去年から『魔法生物飼育学』の教員として採用している森番の「ルビウス・ハグリッド」は、なんと母親が巨人という「半巨人」だったのだ。
この「ルビウス・ハグリッド」と言う人物はホグワーツ在校時代から問題を起こし、挙句退校所分となり、以来森番としてホグワーツで暮らして来た。
しかし問題を起こすのは在校時代だけではなく、とある生徒によると「皆ハグリッドを恐れていますが、怒らせたら何をされるか分からないので口を閉ざしています。去年僕はそのお蔭でヒッポグリフに襲われました」と語った――。
「――なんだこの不愉快な記事は!……っていうか、この生徒って……」
「間違いなくマルフォイだよ!あいつ、自分ミスで怪我したって言うのにハグリッドのせいにして!!」
今クリスの頭の上にヤカンを乗せたら、あっという間に沸騰しそうなほど頭に血が上っていた。クリスは記事を破り捨てたい衝動を抑えると、叩きつけるようにして記事をハリーに返した。