第20章 【半巨人】
「――なるほど、まさかハグリッドに巨人の血が入っていたとはな」
それを聞いたのは、いつも通り朝寝坊をしたクリスが、大広間で朝食兼昼食を取っている時だった。
昨夜ロンと一緒にハリーがパーティ会場から出ていった後、ハグリッドは中庭でマダム・マクシームと話しをしていたらしい。そしてハグリッドは、マダム・マクシームに「自分と同じ半巨人だ」と打ち明けたと言うのだ。それを聞いて、クリスは納得と同時に少々不安も感じた。
巨人と言えば気性が荒々しく、獰猛で『例のあの人』の力が最盛期を迎えていた時、一緒になって人間を殺していた種族だ。10数年前多くの『闇祓い』によって殺されたが、今も数える程度の生き残りが、人の立ち入らない山の奥深くで隠れ住んでいると言われている。
「まあハグリッドが隠したがるのも無理は無い。余計な誤解を生むしな。それにマダム・マクシームが否定するのも分かる。誰だって少しでも『例のあの人』と繋がりがあるなんて思われたくないだろうからな」
それはクリス自身にも言えるの事であった。どんどん濃くなる左手首の痣。誰かに直接相談出来たら良いのだが、父に尋ねても、あの無口な父がどこまで話してくれるか分からない。
思い切ってダンブルドア校長に相談しようとも思ったが、食事時は他の人の目があるし、かと言って直接校長室に行こうにも、合言葉が分からない。
結果、クリスはこれ以上痣が濃くならない事を祈るしかないのだ。クリスは紅茶を飲むと、思わずため息を吐いた。
それから、あれよこれよと言う間にクリスマス休暇が過ぎ去り、新学期が始まった。初めの授業はクリスの苦手な『薬草学』だ。寒い中城から所定の温室まで歩いていくのは苦行だったが、他の3人の様に『魔法生物飼育学』の戸外授業が無いだけマシだった。
クリスは3人に「昼食の時大広間で会おう」と言うと『マグル学』のクラスに向かった。『マグル学』では新しく、マグルの日常生活において必要な道具について学ぶ事になった。マグル達にとって身近な品が、魔法界ではどれくらい似て非なるものかを学んだ。
授業が終わると、クリスはルンルンとスキップしながら大広間に向かった。途中、廊下でセドリックを見かけた。