第19章 【Party night】
ハーマイオニーも、怒りで周りが見えなくなってきていた。拳をグッと握り、顔を真っ赤にして震えている。ロンも負けじと、怒りで耳まで真っ赤にして、ハーマイオニーを睨みつけている。
両者の間でバチバチと火花が散り合うと、その間にハリーが割り込んだ。
「2人とも止めなよ、折角のクリスマスだって言うのに」
「ああそうだな、こんな裏切り者と一緒にいる位なら、ピーブスでも相手にしている方がマシだ!じゃあな、ビッキーによろしく!!」
ロンがバシッと言い放つと、大広間を出てどこかへ消えてしまった。その後をハリーが追いかけた。残された女子たちは目くばせし合うと、黙って散り散りになった。
クリスはディーンを探したが、見当たらなかった。口論している内に、誰か別のパートナーを見つけたのかもしれないし、お腹が減って食べ物を取りに行ったのかもしれない。
どちらにせよ、クリスは疲れてもうダンスを楽しむ余裕も無かった。仕方なく元のテーブルに戻って俯いていると、上から聞きなれた声が落ちてきた。
「おや、クリス。僕の誘いを断った癖に、随分暇そうにしてるじゃないか」
「……ドラコか」
見上げると、憎たらしいほど自信に満ちた顔をしたドラコが立っていた。真っ黒いビロードのパーティローブを着て、いつにも増してプラチナブロンドの髪をぴっちりと後ろに撫でつけている。だが隣にいるはずのパグ犬そっくりなパンジー・パーキンソンは何処へやったのか、影も形もない。
「一曲僕と踊らないかい?そうすれば今までの無礼を許してあげるよ」
「意味が分からん」
「僕の誘いを散々断っておいて、挙句他の男と踊るなんて……君じゃなかったら縁を切っているところだ」
「切って良いから、どこかへ行け。私は今踊りたい気分じゃないんだ」
シッシッと手を振ると、ドラコはその手を取って無理矢理クリスをイスから立ち上がらせた。
「おっ、おいドラコ!!」
「まあまあ、まずは一曲」
ドラコは右手を取ると、優雅に曲に合わせてステップを踏んだ。懐かしい――子供の頃2人で猛特訓したダンスを、また踊っている。まるで時が遡ったみたいだ。
クリスはいつの間にか体をドラコに預け、そっと目を閉じた。ドラコのリードは上手く、目をつぶっていてもきちんと踊れる。心地よい、とはこういう事を言うのだろうか……。