第19章 【Party night】
初めはゆっくりとしたワルツだった。ディーンと手を組み、クリスは軽やかにステップを踏んだ。審査員席にはホグワーツの先生方と、ルード氏、それにクラウチ氏――ではなく、何故かロンの兄のパーシーが座っていた。
驚きのあまり、クリスはステップを間違えてディーンの足を踏んでしまった。
「悪い!ディーン!!」
「いっ、いや、大丈夫だよ」
一瞬痛そうに顔を歪めながらも、ディーンは笑って見せた。そして曲が終わると、今度はアップテンポな曲が流れてきた。
横目で観察していたが、この曲の間もロンはハーマイオニーとクラムを睨みつけたままだった。
仕方がない――。曲が終わると、クリスはディーンに飲み物を取って来ると言って、ロンの座るテーブルに行った。丁度そこに、ハリーとパーバティ、それに間が悪い事にハーマイオニーまで来てしまった。
「や、やあ。今夜は良い夜だな」
「本当ね、踊ってたら暑くなっちゃったわ」
ほのかに頬を紅潮させながら、ハーマイオニーが言った。辺りに気まずい雰囲気が流れる。しかし当の本人は全く分かっていない様子で手で顔を扇いでいる。
「ハーマイオニー、貴女どうやってビクトールを“オトした”の?」
「どういう意味?ビクトールなら今飲み物を取に行ってるけど?」
パーバティの嫌味にも、今のハーマイオニーは気づいていない様だ。これは困った事になったと、クリスは直感した。案の定、ロンもパーバティに乗っかってきた。
「ビクトールだって?まだ“ビッキー”って呼んでないのか?」
「2人とも、何言ってるのよ。いつもらしくないわ」
「いつもらしくないのはどっちだよ!!」
ロンが怒鳴った。幸い音楽にかき消され周囲の人には気づかれなかったが、これ以上熱くなるとどうなるか分からない。クリスは何とか鎮静化しようとしたが、ロンはヒートアップするばかりだった。
「少しは落ち着け、ロン」
「これが落ち着いていられるか!相手はダームストラングなんだぞ、ハリーの敵だ!それなのに君ときたらべたべたして!この裏切り者!!」
「裏切り者ですって!?ハロウィーンの夜あの人を見て興奮したのは誰!?隙あらばサインを貰おうとしていたのは誰!?あの人のミニチュア人形を大事持っている人は誰!?」