第19章 【Party night】
パーバティがしげしげとドレス一式を眺めている中、クリスはハーマイオニーの事ばかり気にしていた。
彼女のベッドにはカーテンがひかれ、ごそごそ音がしている。中でパーティの準備をしているんだろうが、だったら何故コソコソ隠れる様にして支度をしているのだろう。
クリスはドレッサーの前に座ったまま、ハーマイオニーに声をかけた。
「ハーマイオニー、出てきてこっちで一緒に着替えたらどうだ?」
「嫌よ、だって……恥ずかしいんだもの」
「今更恥ずかしがる間柄でもないだろう?それにそこじゃあ碌にメイクも出来ないだろう」
「良いの、気にしないで。それに私、早めに仕度を終えて、行かなくちゃいけない所があるから」
ハーマイオニーの行かなくちゃいけない所なんて、図書館と屋敷しもべ妖精のいる厨房くらいしか見当がつかない。まさかパーティに来ている連中全員に『反吐』に入るよう勧誘するんじゃないだろうか。彼女ならやりかねない。
ラベンダーとパーバティの気が済むまで化粧をさせると、クリスは隠れる様にしてドレスにそでを通した。最近左腕の痣がハッキリしてきている。それを皆に見せるわけにはいかない。
幸いドレスグローブもセットになってたので、痣は隠すことが出来た。それから紅い薔薇のコサージュを髪に着け、去年のクリスマスにルシウスおじ様に貰ったダイアのネックレスを付ければ完成だ。若干気にしていたささやかな胸も、このゴージャスなネックレスのお陰で逆にバランス良く見える。
クリスのドレス姿に、ラベンダーとパーバティはハイタッチして喜んだ。
「最っ高の出来よ、クリス!」
「いつもこうしていれば、良い男が寄って来るのに」
勿体ない、と2人は愚痴をこぼした。クリスの仕度が終わったのが分かったのか、やっとハーマイオニーもカーテンの隙間から顔をのぞかせた。
「クリス、終わったの?」
「ああ、後は靴を履くだけだ」
「ねえ、お願いだけど……変な所がないかちょっと見てくれる?」
「良いけど、だったらちゃんと出てきてくれないかな?じゃないと細かい所まで分からない」
しぶしぶと言った様子で、ハーマイオニーはベッドのカーテンを開けた。そして出てきた彼女の姿を見て、ラベンダーとパーバティはあんぐりと口を開け、クリスは満足気にニヤリと笑った。