第17章 【hunting】
「おい、無視するなクリス!」
「煩い、お前の話しは聞き飽きた」
「それじゃあいい加減OKしてくれないか?ダンス・パーティは目の前なんだぞ」
「知った事か!例え何があろうとパーティには出ない」
「それじゃあ僕に誰と出ろって言うんだよ!」
「誰でも好きな相手を選べ。ああ、パンジー・パーキンソンとかおススメだぞ」
「あらクリス、たまには良い事言うじゃない」
いったいどこから湧いて出たのか、目の前には余裕綽々のパンジーが満面の笑みで立っていた。パンジーはドラコの腕に絡みついた。
「ねえドラコ、クリスもそう言ってる事だし一緒にパーティに出ましょう?」
「うん、お前ら2人ならベストカップル賞間違いなしだ」
「ほらぁ、当の本人もこう言っている事だし」
パンジーは甘えた声でドラコに話しかけたが、ドラコの眼はクリスを捉えたままだった。
「自分勝手は許さないぞクリス!僕らは将来結婚する仲だ!君は自分の家を潰したいのか!?」
――その時、ついにクリスの中で何かが切れた。家、許婚、結婚。幾度となく聞かされた言葉を噛みしめると、クリスの拳がふるふると震えた。
「……まえは」
「どうしたクリス?」
「お前は家の名前を出さないと女ひとり誘えないのかあぁっっ!!!」
ざわついている大広間でさえ、全員に聞こえる程大きな声でクリスが叫んだ。あまりの迫力に、ドラコとパンジーが怯んだ。いや、大広間に居た全員が一斉に話を止めた。
「もういい!!」
クリスはそのままズンズンとグリフィンドール席まで進み、ぽかんと口を開けて呆けているディーンの目の前に仁王立ちした。
「ディーン、ダンスの相手はまだ決まってなかったよな?」
「え?あ……う、うん」
「なら、私と踊れ!返事はっ!?」
「はっ……はい」
クリスの気迫にはNOと言わせない何かがあった。クリスはやおらドラコの方に振り返ると、目をギラつかせながら笑って言い放った。
「聞いたか!?これでもう私を誘う事は出来ないな!ハッ!ざまーみろ!!」
そう言うなり、クリスは食事もとらず大広間を後にした。クリスが居なくなり、静まりかえった大広間では、一部始終を見ていたダンブルドアが1人「ほっほっほ」と言いながら拍手を送っていた。