第17章 【hunting】
ハーマオニーは手紙をカバンに突っ込むと、また一気に皿を平らげ、大広間を出て行ってしまった。行く先はきっと図書館だろう。チャンドラーの手紙が彼女の胸の炎に余計な油を注いでしまった様だ。ハリー・ロン・クリスはこれからどうなるんだろうと、そろって頭を抱えた。
しかしそんな朝の騒ぎを抜かせば、ハーマイオニーはいつもと比べ何の変化も見せなかった。
ダンスパーティが近づき、女子生徒達がきゃあきゃあ浮足立っていても、それに加わろうとはせず授業の予習復習に余念がなかったし、今現在もスネイプが出した宿題に、羊皮紙にびっちり細かい字で羽ペンを走らせている。
「あなた達、本当に勉強する気はあるの?」
「勉強にやる気を出したら、僕が僕でなくなっちゃう」
アイデンティティーの崩壊だよ、とロンは『爆発スナップ』のカードを使ってトランプタワーを築いていた。呆れた事に、その眼はどんな授業中よりも真剣だった。
ハーマイオニーはため息を吐いて、今度はハリーに視線を移した。ハリーはハリーで宿題もせず「キャノンズと飛ぼう」を読んでいる最中だった。
「ハリー、彼方もよ。クディッチの本なんて読んでいる暇があったらやるべき事があるんじゃない?」
「例えば?」
「あの金の卵の秘密を解くのよ!」
「冗談いうなよハーマイオニー、次の課題まで2カ月半もあるんだぜ?」
「あと2カ月半よ!」
ハーマイオニーは譲らなかった。彼女曰く、課題を解くのに何週間もかかったらどうするんだと主張した。
確かにハーマイオニーの考えも一理あるが、目の前にはクリスマスが待ている。生徒達が目を爛々と光らせて心待ちにしているのに、ハリーだけクソ真面目に課題の事を考えるなんて出来やしない。
「クリスマスだぜ、ハーマイオニー。それにハリーに休息が必要だよ」
「クリスマスと言えばハリー。ダンスのお相手はもう見つかったのか?」
「……まだ」
聞こえるか聞こえないかほど小さい声で、ハリーが返事をした。ドラゴンと対峙したあの勇敢な姿はどこにいったんだろう。ダンスパーティまでと2週間ちょとだと言うのに。
ハーマイオニーと一緒に『魔法薬学』の宿題をしていたクリスは軽くため息を吐いた。