第2章 【variation】
「良いですか、お嬢さま。ホグワーツで過ごす時間も残すところあと半分になりました。お嬢さまがご卒業されてすぐドラコ様とのご結婚が控えております。ですからこのダンスパーティはお2人のご婚約を披露するまたとない機会で――」
「あぁーー!!もう、うるさい、うるさい!それよりチャンドラー、紅茶を入れろ!それとクロテッドクリームたっぷりのスコーンもだ!!」
怒鳴りたいだけ怒鳴り散らすと、チャンドラーを部屋から追い出し、扉の鍵を閉めてしまった。こうなると、もう命令を聞く以外、手のだしようがない。仕方なく、チャンドラーは言われた通り厨房に向かって行った。
クリスはベッドに伏せって、ドラコのセリフを反芻していた。その度に怒りが湧いてきて、ベッドの上で枕を抱えてゴロゴロ転げまわった。
――許婚だから――もうそんなセリフ聞き飽きた。こうなったら何が何でもパーティなんかに出るもんか。枕に顔を埋めて、クリスは目をつぶった。嫌な事があった時は、こうするのが1番だ。それからスコーンが焼けるまで、クリスはしばらく眠っていた。
その翌日、クリスは朝からチャンドラーの手によって体中のあちこちを採寸されていた。本当は新しい制服が欲しかったのだけど、チャンドラー曰く「失礼ですがお嬢さまは入学されてから3cmと成長されておりません」と痛い所を突かれ、代わりにチャンドラーが制服を直す事になった。
裁縫に関してはかなりのこだわりを持つチャンドラーが、メジャーを持って頭のてっぺんっからつま先まで丁寧に採寸していると、ドラコから2回も連絡が来た。
1度目はもう一度学用品を買いに行こうという誘い。2度目は一緒にクディッチのワールド・カップに行こうと言う誘いだった。しかしクリスはその2つとも、きっぱり一言「NO!!」と言って断った。
ドラコからしてみれば、どうしてクリスがそんなに怒っているのか分からない様だった。それが余計にクリスを苛立たせた。しかし、本当のところ、自分でもどうしてこんなにも腹を立てているのか分からなかった。