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ハリー・ポッターと闇の姫君

第2章 【variation】


 リストの一番最後に書いてあった文字を見て、クリスは大声を上げた。道行く人が、クリスの方を見てクスクス笑っていたが、そんな事は些細な事だった。これか、これなのか?ドラコがさっきからご機嫌な理由と言うのは!!

「ド……ドラコ、もしかしておじ様は今年、ホグワーツでダンス・パーティが開かれるとか何とか言っていなかったか?」
「察しが良いな、クリス。まあ、パーティローブが必要って書いてある時点である程度予想は出来るだろう。よっぽどの馬鹿じゃなければ。それに今年は――」
「まさかお前……そのパートナーに私を誘う気じゃないだろうな?」
「何を言っている、僕のパートナーに君以外誰がいるっているんだ。君は僕の許婚だぞ?」

 さも当たり前だとでも言いたげなその一言に、クリスの怒りが沸点に達した。クリスその横っ面を引っ叩きたいのを必死に我慢して、拳を握りしめた。

「――……ない」
「なんだって?」
「ダンスパーティなんて出ない!もう帰る!!」

 クリスは踵を返すと、ドラコの制止もきかず、ずんずんともと来た道へと帰って行った。頭の中は怒りでいっぱいだった。しかしその怒りはいったい何に対する怒りなのか、その時のまだクリスには分からなかった。

* * *

「そっ、それで喧嘩して帰ってらしたんですか!?」
「それの何が悪い」

 帰って来て早々、クリスは事のあらましをチャンドラーに話すと、チャンドラーはため息を吐いて「どうしてこんな風に育ってしまったんだろう」と己の育て方を振りかえざるをえなかった。
 クリスの母はクリスが生まれて直ぐに死んでしまい、父は仕事で殆ど家に寄り付かず、クリスの世話はほどんど屋敷しもべのチャンドラーが仰せつかっていた。決して蝶よ花よと育てたわけではないのに、出来上がったのは短気で我儘なお嬢さまだ。

 ホグワーツに入学したての時はまだ良い、2人とも11歳という子供だったのだ。しかしいまや14歳になり、そろそろ異性を意識してもいいはずだ。それなのにクリスはドラコを異性としてみるどころか許婚としても見ていない。
 このままホグワーツを卒業したら……クリスは結婚式当日国外逃亡を計ってもおかしくない状況だ。チャンドラーにしてみれば頭痛の種が増えるばかりである。
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