第15章 【ドビーとウィンキー】
「ウィンキーは今も前のご主人様に縛られているのでございます。何でも言って良い事は言いとウィンキーに言い聞かせても、耳を貸さないのでございます」
「それじゃあ、屋敷しもべ妖精は言いたい事も言えないの?」
「そうでございます、ハリー・ポッター。それが屋敷しもべ妖精の原則の1つでございます。わたくし達はご主人様の秘密を守りぬくのでございます。それにご主人様家族を敬い、決して悪口を言わないのがわたくし達の決まりでございます」
「それじゃあ、今はマルフォイ家の事を言っても良いんだね?」
ハリーが試す様に、ニヤッと笑った。ドビーは急に怯えた顔になって、眼をキョロキョロさせ、まごついていたが、意を決したように口を開いた。
「はい、ハリー・ポッター。ドビーは言います――昔のご主人様たちは……悪い闇の魔法使いでした!!!」
言うや否や、ドビーは駆け足でフライパンの並んでいる棚まで行くと、フライパンで頭を何度も何度も殴り続けた。ハリーは急いでフライパンを取り上げると、ネクタイを引っ張ってドビーを元の場所まで連れ戻した。
「ありがとうございます、ハリー・ポッター様……」
「まだまだ練習が必要みたいだね」
「練習ですって!?ドビー、あなたはご主人様たちの事を悪く言っても罪悪感の欠片もないなんて!あなたは悪い屋敷しもべでいらっしゃいます!!」
「ドビーは悪くありません、ドビーはもうあの人たちの屋敷しもべではないのです!!」
「な……なんて恥知らずなんでしょう。ああ!!あたしは……あたしだけでもお屋敷に帰りたい!!お可哀相なクラウチ様。ウィンキーがいなくてどうしていらっしゃるんでしょう?クラウチ様にはウィンキーが必要です!!あたしの母も、その母もずっとクラウチ様に仕えていらっしゃったのに!ウィンキーが自由になったとお知りになったら、どんなに嘆く事か!!ああ恥ずかしい、情けない!!」
ウィンキーはスカートに顔を埋めてまた泣き出した。ハーマイオニーは頭を撫でながら、必死になって慰めようとしている。
「大丈夫よウィンキー、私達最近クラウチさんに会ったけど、ちゃんとしていらしたわ」