第15章 【ドビーとウィンキー】
「どこに行くんだ?」
「いいから、こっちよ!!」
ハーマイオニーは3人を銀の大皿の上に沢山の果物がのった絵の前に連れてきた。その時、ハリー、ロン、クリスの3人はハーマイオニーが何をしようとしているのか分かった。ロンは絵から遠ざかり、壁ギリギリまで後退した。
「ハーマイオニー!まさかまた僕達を『反吐』の活動に参加させようとしている気なのか!?」
「違うわよ!それに『反吐』って言わないで!S・P・E・Wよ!」
「それじゃあ何だ?屋敷しもべ妖精を厨房から解放して一揆でも起こさせようって魂胆かい!?」
「それも違うわ!!ああっ!もういいから一緒に入って!!」
ハーマイオニーが絵に描かれた洋梨をくすぐると、洋梨はクスクスッと笑い、ぐにゃっと曲がったかと思うと立派なドアの取っ手に姿を変えた。
ハーマイオニーは取っ手に手をかけると、3人を睨みつけ一緒に入るよう促した。その迫力に負けた3人は、しぶしぶハーマイオニーの後についてドアをくぐった。
すると中は大広間と同じくらい広く、天井も高くて立派な石造りの厨房だった。ピカピカのフライパンやお鍋が並び、大きな食器棚にはいつも宴会で使う金の大皿が幾つも積み重ねられていた。
「ハリー・ポッター!ハリー・ポッター様!!!」
聞いた事のある甲高い声がしたと思ったら、ハリーの腹めがけて1人の屋敷しもべ妖精が突進してきた。ハリーは一瞬「うっ」と息を詰まらせ、力いっぱい屋敷しもべ妖精を腹から引きはがした。
「ド……ドビー?」
「はい、ドビーめで御座います。ハリー・ポッター様!」
「ドビーだって!?」
「おお、これはクリスお嬢さま!お懐かしゅう御座います!」
ハリーとクリスは目を白黒させた。ドビーは一歩下がり、巨大な目玉に涙を浮かべてハリーとの再会を喜んだ。
ドビーの格好は、今やクリスの知る破れた小汚い枕カバーを被った姿とは違い、ヘンテコな格好をしていた。だがこれでも彼なりに考えてコーディネートしたのだろう。帽子の代わりにティーポット・カバーを被り、上着は着ずに趣味の悪いネクタイを締め、子供用のストレッチ半ズボンを履き、片方ずつ別々の靴下を履いていた。