第15章 【ドビーとウィンキー】
「良いじゃないか、誘われるだけ。僕なんてもっと悲惨なんだから……」
クリスの心中を知らないハリーは、隣りで深いため息を吐いた。なんでも聞いた話によると『三大魔法学校対抗試合』の代表選手はクリスマス・ダンスパーティで初めに踊るのが伝統となっており、ハリーは絶対にパートナーを見付けなければならないらしい。
あんな凶暴なドラゴンに立ち向かう勇気はあっても、女の子に立ち向かう勇気はハリーには無いみたいだ。
一方、セドリックは引く手数多で、女の子の方から誘いに来る数の方が多いと聞く。しかしクリスを誘って以降、セドリックが誰を誘ったのかは誰も知らない。でもあのセドリックの事だ、きっと良い相手を見つけた事だろう。
もちろんハリーにも女子からの誘いが無いわけでは無かった。あのドラゴンを見事に出し抜いた最年少選手にして、クディッチのシーカーでもあるハリーだ、誘いが無いわけがない。
3人ほど下級生がハリーをダンスパーティに誘いに来てくれたが、ハリーは断ってしまった。突然で緊張していた事もあるし、それにハリーには誰か別に誘いたい相手がいる事を、クリスは知っていた。確かレイブンクローの、チョウとかチュウだとか言う名前の子だった気がする。
因みにロンも、パートナーがいなかった。誘おうとしても、女の子は皆かたまって行動しているので、1人でいるところを誘うチャンスが無かった。
ハーマイオニーはパーティに興味が無いのか、ハリーとロンが女の子を誘おうと休み時間を潰している間、ずっと図書館にこもりっきりだった。クリスもそうしたかったが、図書館に居るとドラコを含め絶対に誰かしら声をかけて来るので、空いた時間はずっと談話室にこもっていた。
ダンスパーティのお知らせが貼られてから約10日後、いつもの様に3人ほど誘いを断って談話室に入ると、フレッドとジョージが入り口の両サイドから現れて、かしこまって手を差し出した。
「「お帰りなさいませ、お嬢さま」」
気取った声でそう言うと、軽く手を取ってクリスを暖炉の前のふかふかのソファーに座らせた。するとリーが紅茶を持って来て、紳士風にお辞儀をした。