第2章 【variation】
クリスがお金をお財布に入れて戻って来ると、ドラコはニコニコして待っていた。本当に今日のドラコはどうしたんだろう、もしかして何か悪い物でも食べたのかもしれない。不気味に思うクリスの隣で、ドラコは終始笑顔だった。
グリンゴッツから出ると、ドラコはまずはフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーでアイスクリームを食べようと言うのだ。なぜ突然?と思うクリスだったが、特に断る理由も無かったので付き合う事にした。
「きょ、今日は特に暑いな、クリス」
「そうか?いつも通りだと思うけど」
そう言えば去年はここでアイスを食べながらハリーと一緒に魔法史の宿題をやっていたな~、なんて思い出していると、ドラコがベンチに乗せていたクリスの手の上に、自分の手を重ねてきた。
「な、なあクリス……こう言う所を他人から見られると、どう思われると思う?」
「さあ?兄妹か何かじゃないか?」
アイスクリームを食べながらクリスが適当に答えると、ドラコがギュッと手を握ってきた。
「こ……恋人同士に見られやしないかな?」
「はあ?」
いきなり何を言い出すんだと、クリスは本当にドラコの頭が心配になった。14年間一緒に育ってきたが、クリスがドラコを異性と見た事はないし、ドラコもクリスを異性と見た事は無かった。その筈だったのに、今のドラコはなんだ?夏の暑さで頭がイカレてしまったとしか思えない。
クリスはずいっとドラコに顔を近づけた。
「ドラコ、暑さで頭がイカレたか?」
「い、イカレてなんてない。ただ僕は……一般論を言っているだけで……」
「ふーん、一般論ね」
妙に顔を真っ赤に染めたドラコを横目に、クリスは何だか嫌な予感がしてきた。そして、その予感は的中する事になる。
アイスクリームを食べ終わったクリスは、何から買おうかリストを広げた。
「なになに……新しい教科書はこれだけか、あと羽ペンとインクも必要だな。それとパーティローブか。そうだ、新しいローブも欲しいんだよな――って、パーティローブ!!?」