第14章 【Shall We Dance?】
いきなり名指しされて、ロンが素っ頓狂な声を上げた。しかしマクゴナガル先生は毅然とした態度でロンを待っている。
「さあ、ミスター・ウィーズリー、ここへ」
「ロンッ!」
ハリーに肘で押されて、ロンは千鳥足で教室の真ん中へ出た。そのままマクゴナガル先生の傍に行くと、先生はロンの手を取り体を密着させた。
「ミスター・ウィーズリー。手を腰に回しなさい」
「え?」
「こうですよ、こう!」
マクゴナガル先生は無理矢理ロンの手を取ると、自分の腰に回した。そして簡単なステップをその場で踊ってみせた。
みんな笑いたいのを必死に堪えようとしていたが、数人は堪えきれずクスクスと笑い出した。ロンは顔が髪の毛と同じくらい真っ赤になっている。ロンには悪いが、この時ばかりはクリスも眉間の皺もいくらか緩んだ。
何分ほど踊っていただろう。マクゴナガル先生は、今度は男女お互いペアを組んで実際に踊ってみるよう生徒達に言った。
先生の指示で男女一列に並ばせられると、向かい合う者同士ペアを組むことになった。クリスの相手はディーン・トーマスだった。そして不運にも、ロンは引き続きマクゴナガル先生と踊りの手本として見世物になるはめになった。
「な……なんだか少し緊張するね」
「そうか?」
クリスは照れもせずディーンの手を取ると、背筋を伸ばし腕を少し上げた。
「違う、ディーン。手はもう少し上だ」
「こ……こう?」
「そう、それで体はこうくっつけて……」
クリス達だけ、明らかに他のペアと違ってさまになっていた。と、言うのも実はクリスにはダンスの経験があったのだ。慣れた様子のクリスに、ディーンが驚きの声を上げた。
「クリス、ダンス初めてじゃないの?」
「ああ、前にマルフォイ家主催のダンスパーティでドラコと踊った。パンジーの悔しがる顔が見たくて、練習相手も本番もドラコとずっと踊ってた」
あの時のあの女の悔しそうな顔と言ったら……思い出し、クリスは邪悪な微笑みを見せた。
しかしその時の経験が功をなしたのか、時が経っても体は覚えているもので、クリスのリードで、ディーンは緊張していたが何とかステップを踏んでいる。と、その時ディーンの足がクリスのつま先を踏んだ。