第14章 【Shall We Dance?】
色々あったが、無事今年もホグワーツでも12月を迎える時が来た。いや、しかしある意味クリスにとっては“無事”では無かった。12月のある日、寮の掲示板を見てクリスの胸に嫌な予感がはしった。掲示板にはこう書かれてあった。
【お知らせ】
土曜の午後13時より、ダンスパーティの予行練習を始めるため、4年生以上の生徒達は学年別に各教室に集まるように。
――マクゴナガル教授――
ついに、ついに恐れていた日がやって来た。回避できないとは分かっていたが、“奴”の足音が忍び寄って来るのがどこからか聞こえてくる様だった。
しかし他の生徒達は『ダンスパーティ』と言う言葉に浮かれ、あちらこちらで噂が飛び交った。やれダンブルドアがハチミツ酒を100樽買い込んだとか、やれ「妖女シスターズ」というバンドの出演を依頼したとか。
だがそれよりも何よりも、誰が、誰をパートナーに選ぶかで男子生徒も女子生徒も浮足立っていた。
そんなダンス・パーティに誰もが浮かれる中、クリスだけは胸に断固たる決意を固めていた。今年のクリスマスは実家に帰ると。誰が誘ってこようが全員断ってやると。それはもちろん“奴”も含まれていた。
「やあ、クリス。君の寮の掲示板にもダンスパーティの知らせは張られたんだろう?」
そして掲示板にお知らせが張られた日の夕方の大広間に“奴”が現れた。他の誰でもない、ドラコ・マルフォイだ。
分かっていた、分かっていたがクリスの機嫌素を損ねるのには十分すぎる程だった。
「分かってると思うけど、僕と君は許婚同士。当然僕のパートナーはき――」
「私は今年のクリスマスは実家に帰る。誰がダンスパーティなんぞに出るもんか」
「クリス、いい加減子供っぽい我儘はよせ。僕と君はいずれ結婚する仲だ!」
「そんなの親が勝手に決めただけだろう?私は私の道を行く、だからお前も好きな相手を選べ」
「好きな相手って……許婚がいるのに他の女を誘う馬鹿がどこにいる」
「じゃあ、お前がその馬鹿1号になれば良いだけの話しだ」
「僕はそんな事許さないぞ!」
「誰もお前の許しなんて乞うてない」