第14章 【Shall We Dance?】
何しろ談話室のテーブルと言うテーブルには、味しそうなジュースやお菓子やご馳走が並び、天井からは輪飾りや、リボン、絵の上手いディーン・トーマス描いた旗が垂れ下がっていた。そのどれもがグリフィンドールのシンボルと、ハリーが箒に乗ってドラゴンを出し抜く場面が描かれている。
こんなお祭り騒ぎ、去年グリフィンドールがクディッチで優勝杯を取って以来だ。
「本当に、皆お祭り騒ぎが好きだな」
「だってあんな活躍をしたんだぜ?優勝も夢じゃないよ!」
ロンは喜んで輪の中に入って行った。クリスもやれやれと言いつつ、だが満更でもなさそうにテーブルの上に乗っていたエクレアに手を伸ばした。
主役のハリーは皆にもみくちゃにされながら、ドラゴンと戦った時の感想を皆から聞かれている。そしてもう一つの主役、もとい“主品”である金の卵は、あちらからこちらへと皆の手に代わる代わる回されていた。
「へー、意外と重いな、これ」
「ハリー、中を開けてみろよ!」
「一大イベントだぜ!!」
再びハリーの手に金の卵が帰って来ると、ハリーは卵の天辺についていた留金を外し、中を開いた。その瞬間、この世のものとは思えない金切り声にも似たキーキーと耳をつんざく音がグリフィンドール寮全体に響き渡った。
「ハリー――その――卵を――閉じろっ!!」
ジョージが耳を抑えながら大声で叫ぶと、ハリーはパチッと卵を閉じた。するとあれほど煩かった音がピタリと止まった。しかしそのキンキンした金属音に似たノイズはまだ耳の奥に残っている。
「いったい何なんだ今の?」
「誰かが拷問を受けていた!!」
部屋の隅に居たネビルが、突然大声を出した。顔が真っ青になっていて、身体が震えている。こんなネビルを見るのは、例のムーディ先生の授業以来だ。
「ハリー大変だ!今度は『磔の呪文』と戦わなくちゃいけないんだよ!!」
「まさか……あれは違法だよ?」
「そうそう、魔法省のお偉いさんも居るのに、代表選手に『磔の呪文』なんて使うかよ。思うにあれは、我が兄上のパーシーの歌声に似てたな。もしかするとハリー、君はあいつのシャワー中に襲い掛からなきゃいけない羽目になるぜ」
ジョージがそう言うと、その場に居たグリフィンドール生がドッと笑った。