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ハリー・ポッターと闇の姫君

第12章 【木綿のハンカチーフ】


「それで?どうしてあんなところで泣いていたの?」
「ちょっと……友人関係のゴタゴタでね」
「ああ、なるほど。有名人の友達を持つと苦労するね」
「セドリックこそ、友人を放っておいて何でこんな所に来たんだ?」
「……前にも言ったよね、人に囲まれているのも辛い時があるって」

 そうだ、代表選手に選ばれてからというもの、セドリックの周りにはいつも取りまきがいて、セドリックは息つく暇も無かったのかもしれない。それなのに、セドリックはいつも笑顔で笑っていた。まるで仮面を被っているみたいに。
 例え『日刊預言者新聞』に名前が載らなくても、生徒の大半はセドリックを応援して優勝を期待していた。1000人近くの期待を背負っているんだ。その重圧は、到底クリスなんかでは計り知れない。

「それで、上手く逃げてきたのか?」
「そう言う事。そしたらまた泣いている君に出会った。もしかしたら僕らは、ひかれ合う運命なのかもしれない」

 思いがけずキザなセリフが飛び出したことに、クリスはプッとふき出した。すると隣りに居たセドリックも笑った。

「良かった、笑ってくれて」
「顔が良くて女子に人気だと思っていたけど、まさか口まで上手いとはな」
「これでも人気者で通ってるんでね」
「自分で言うか?それ」
「言うだけならタダさ」

 それを聞いて、クリスはまた笑った。何故だかセドリックと話しをしていると、心が落ち着いてくる。不思議な魅力がセドリックにはあるとクリスは思った。
 外見だけじゃない、温かくて、周りの人達を笑顔にさせる才能が彼にはある。流石はハッフルパフの監督生兼代表選手だ。『炎のゴブレット』に選ばれたのも伊達じゃない。

「ありがとう、なんだか安心した。ハンカチ、洗って返すから」
「そのままでも良いのに」
「私がそうしたいんだ。それに、また話しかけるきっかけになる」
「そうか、それじゃあまた今度」
「ああ、またな」

 別れ際、クリスは言い残したことを思い出した。セドリックが廊下の角を曲がる間際、大声で叫んだ。

「一週間後の課題、頑張れよ!応援してる!」
「ありがとう、その言葉だけで百人力だよ!」

 また上手い事を、と思いながら、クリスはハンカチを大切にローブのポケットにしまい、再び談話室へと戻って行った。
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