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ハリー・ポッターと闇の姫君

第12章 【木綿のハンカチーフ】


 そして『三大魔法学校対抗試合』の第1の課題が行われる1週間前に控えた朝、ホグズミード行きのお知らせが掲示されていた。それを見るなり、ハーマイオニーがクリスを談話室の隅に引っ張っていった。

「これはチャンスかもしれないわ、クリス」
「どういう事だ?」
「『三本の箒』で久しぶりに4人でバタービールでも飲んで話すのよ!ハリーもロンも城の外なら少しは気分も変わるかもしれないし」
「う~ん……一応ロンに伝えて見るけど、あまり期待しない方が良いぞ。あんな新聞を見た後だしな」

 とは言ってみたものの、どうロンに言えばいいものか。あの『日刊預言者新聞』の記事以降ロンはハリーの名前を聞くたび神経質に眉を動かした。
 あれこれ考えた結果、クリスは「当たって砕けろ」作戦に出る事にした。放課後、一緒に『魔法史』の宿題をしているとき、クリスが突然思いついたように話を切り出した。

「そう言えばロン、今度のホグズミード。久しぶりに4人で『三本の箒』によってバタービールでも飲まないか?」

 嫌味が無く、爽やかに、愛想よくクリスが明るい声でそう言うと、ロンの眉がピクリと動き、クリスの顔を見もせず断った。

「嫌だ、ハリーがいるんなら『三本の箒』になんて入りたくない」
「ロン……気持ちは分かるが、いい加減ハリーを許しても良いんじゃないか?」
「許す?はっ、あいつが少しでも大人しくしているんなら考えてやっても良いけど、どこへ行ってもハリー、ハリー、ハリー!!有名人は良いな、立っているだけでむこうから人が集まってくる」
「ロン!ハリーだって目立ちたくて目立ってるわけじゃないぞ!!」
「そんなのどうだか分からないじゃないか!ああ、そうか。君もハリーの方に寄りたくなったんだな!良いさ、勝手にしろよ」

 そう言うと、ロンは怒り心頭に、宿題もそのまま男子寮へと姿を消してしまった。最悪の展開にクリスはどうする事も出来ず、ただその後姿を見ながら、心臓が締め付けられるような気分がした。
 誰が悪いわけでもない。しかし何をどうして良いのか分からず、クリスは居たたまれず談話室を飛びだし、あてもなく廊下を疾走した。やがて息が切れ、足も動かなくなり、そのまま倒れるように暗い廊下の片隅にずるずるとしゃがみ込んだ。
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