第12章 【木綿のハンカチーフ】
ハーマイオニーに関して、ハリーは随分寛容だ。今まではハーマイオニーが、ハリーの扱い方が上手い所為で息が合っている所為だと思っていたが、ここの所いつも一緒にいるし、もしかして――
「ハリー、ハーマイオニーの事好きなのか?」
ぶしつけなクリスの質問に、ハリーはむせて食事をのどに詰まらせた。カボチャジュースで料理を流し込み何とか息を整えると、ハリーは断固して否定した。
「そりゃ、ハーマイオニーは数少ない僕の理解者だし、最近はいつも一緒にいるけど僕には――」
「僕には?」
言ってしまった後で、ハリーは言い過ぎたと思って口を塞いだ。その様子を見るからに、ハリーには他に好きな子がいるらしい。これ以上しつこく追及される前に、ハリーは席を立ち談話室へと帰ってしまった。
しかしそれから1週間後の『日刊預言者新聞』を見て、クリスは思わず「あっ!」と大きく声を上げてしまった。『日刊預言者新聞』の一面にハリーの姿が大きく載り、『三大魔法学校対抗試合』の記事と言うより、まるでハリーの人生を語った1冊の本の様だった。
どの記事にもハリーの写真が載せられ、ハリーがこれまでいかに寂しい人生の中孤独に耐え、両親の事を誇りに思って生きてきたかとつづられていた。おまけにインタビューの記事にはコリン・クリービーの名前でこう記されていた。
――ハリーはホグワーツで本当の愛というものを知った。親友のコリン・クリービーによると、ハリーはハーマイオニー・グレンジャーという人物といつも一緒に居て片時も離れる事は無いと。この人物はマグル出身の美少女で、ハリーと同じく学校の優等生としていつもハリーを支えている――
新聞にはボーバトンやダームストラングの代表選手の名前が小さくすみっこに乗っているだけで、セドリックに至っては名前すら載っていなかった。
分かっている――。これは何かの陰謀で、ハリーの所為ではないと。しかし、いつだって目立つのはハリーだ。不愉快極まりないクリスは、この新聞をドラコから渡されると、怒りのあまりビリビリに破いて捨ててしまった。さらにロンはこの記事を見て、余計にハリーから心が離れてしまったようだった。