第11章 【4人目の代表者】
これはハーマイオニーから聞いたのだが、あのハロウィーンの晩、代表選手達が集まっている部屋で、ムーディ先生が「誰かがハリーを競技中の事故に見せかけ殺すために『炎のゴブレット』に強力な『錯乱の呪文』をかけた」と、そう言ったらしい。
ハリーは誰かに命を狙われている――だが誰だ?誰がハリーを第4の代表選手にさせたんだろう。それともこれはただのムーディ先生の妄想で、本当はハリーが年齢線を超える方法を見付けたのかもしれない。だとしたら、ハリーを許す事は出来ない。
クリスは時計を見た。まだ10時、寝るには少し早い。面倒な『占い学』の宿題でも終わらせようと、クリスは談話室に降りて行った。
すると偶然にも、談話室にはハリーの姿があった。しかも珍しく1人だ。クリスは心臓がバクバクいうのを押さえつつハリーに近づいて行った。
「やあ、ハリー」
「……クリス」
まるで10年と言う長い年月、話していなかった気がする。クリスはハリーになんて言って良いか分からなかった。ハリーも、言葉に迷っているみたいだった。
「『占い学』の宿題、終わったか?私はまだなんだ」
「僕もだよ、もう不幸のネタに尽きちゃってさ」
「同じ事をロンも言っていたよ」
口に出した後、しまったと思った。今ロンの話題を出すのは軽率だった。2人の間に再び重い沈黙が流れる。違う、本当はこんな事を話したかったんじゃない。重い沈黙の中、考えた末クリスは思い切ってずっとハリーに訊きたかった事をきいてみた。
「あのさ……ハリー。私が――」
「うん?」
「私が……その、代表選手になろうと、馬鹿みたいに躍起になっているのを見て、どう思った?」
「どうって……君は、君はいつも一生懸命で、自分の気持ちに素直で、それが羨ましくて……。それなのにどうして僕なんかが選ばれて――出来るなら辞退したいって思ってる」
ハリーの言葉は真っ直ぐで、とても卑屈や謙遜をしているとは思えなかった。――ああ、そうだ。ハリーが賞金欲しさに自分達をたばかるはずがない。クリスはずっと胸につかえていた塊が消えていくのを感じた。