第1章 最悪最凶
「…」
「…」
春樹の顔が、怖いです。いつにも増して、怖いです。
ラブレター黙読中。そして、読み終えたのか、私に視線が…。
「今度入ってくる後輩が、入学前に律儀にねぇ…。顔も見たことねぇくせに、よくまぁこんなことできるよな。」
そう。私がラブレターを貰った相手は、まだ入学すらしてきてない後輩君だったのだ。必ず受験受かるので、もし受かったら付き合ってほしい。とのことだった。でもなぜ私?
「で、電話番号とか書いてあるし、電話してみようかな。」
「あ?ダメに決まってんだろ?」
「な、なんで?」
「電話なんかしたら、会いたい。とか言うに決まってる。」
「そ、そしたら会いに行けば…いいと思うけど…。」
「はぁ……お前さ…。」
「わっ…!?」
視界が回って、春樹の髪の毛が頬につきそうだった。
「っ…。」
これはいわゆる、床ドンというやつで…。私は今、春樹にベッドで押し倒されてしまっているわけで…。
「な、何?離して?」
顔が熱くなっていくのがわかる。震える声で必死に発せた言葉。
「…そんな無防備だから悪い虫がつくんだよ。」
「わ、悪い虫!?とっ、とって!?」
私は大の虫嫌いだ。幼稚園の頃、春樹がセミを持って追いかけてきた。それがトラウマになり、虫が大嫌いになった。蝶でさえ無理なのだ。
「……いいぜ、とってやるよ。じっとしとけ。」
「ん…。」
虫を見たくなくて、目をつぶった。