第1章 最悪最凶
カサカサと音がする。首元に違和感を感じた。
「そ、そこに…いるの…っ…?」
「……あぁ。」
「は、早くとって…!?」
「…あぁ。」
その首元に感じる違和感が、ボタンを外されているのだとも知らず、虫に怯えていた私は……このあと後悔するわけで…。
「っ…!」
リップ音が鳴り、首元にチクリと痛みを感じた。驚いて目を開けた。
「な、何…してるの…っ…!?」
「何、って、虫除け。」
「虫って…。」
「…お前の嫌うような虫じゃねぇよ。」
「ど、どういうこと…?」
「男。悪い虫って男のこと。」
「……!?」
やっと意味を理解した。
「な、なんでキスマークなんて付けるの…?」
「男が寄ってこなくなんだろ?」
「…?」
「…はぁ…お前そんなことも知らねぇの?」
「っ…わ、わからない…。」
「これだから恋愛したことねぇ奴は。」
春樹の発言にムッときた。
「恋愛……したことあるよ…。」
意地を張って、嘘をついてみた。
「!…あ?」
「!…」(やばい…これって…先に逃げとけば良かった…気がする…!)
いまだに私は押し倒されたままなのだ。
「誰と?いつ、どこで?どれくらいの期間?」
「っ…な、なんで言う必要があるの?春樹には…関係ないじゃん…。」
「ある。」
怖いです。顔が怖いです春樹さん。
「っ…は、春樹だって彼女いたことあったじゃん…。お互い様でしょ?」
「あんなん、本心で付き合ってたわけじゃねぇ。」
「っ…。」
春樹は今まで、たくさんの女性と付き合ってきた。年上から年下まで、年齢は幅広い。毎日何をしていたのかも知っている。