第5章 昔話
「じゃあ言いだしっぺのお前から話せよ。」
「はいはーい!俺が中学の頃は、こんな髪色とかじゃなくて、黒髪で、普通の男子中学生だったわけよ。」
「ほーう。」
「んで、超絶陽キャ!…ではなく、実はいじめられてて…。」
「え…。」
「…俺さ、喧嘩とかマジで弱くて、てか今も弱いけど。でも、先に手出したら絶対に負け。ってわかってたから、喧嘩なんかしなかったし、てかまず負けるし…。んで、中学2年の時からいじめられてたんだけど、あと1年踏ん張れば楽になれる。って、高校入ってから、楽になれる。って思ってたんだけどさ…。」
「今もいじめられてるとか?」
春樹が頬杖をつきながらそう言った。
「いや……俺今、すっげぇ楽しい!!」
『!…』
漫画みたいに、皆が同時に目を見開いた。
「中学の時の俺いじめてた奴らに仕返しとか出来なかったけど、今そんなのどうでもよくてさ。ほら、よくさ、仕返しなんかしても同じことしてるだけだから。とか言われるけど、俺はぶっちゃけ酷い目に合わされたから仕返ししてやりたくて。でも、そんなのどうでも良くなるくらい、ホントに今が楽しい。」
「フッ…良かったじゃん。」
「おう!だから、俺と友達になってくれて、ホントにありがとな!」
「…おう…。」
春樹が珍しく照れていた。
「はい、俺の昔話終わり!次誰が話す?」
「…」
「…」
「…」
「…え?俺だけ話して終わり?それはないって!」
「じゃあ、私が話す。」
「お前、話す過去とかあんの?」
「…わかんない。」
正直、何を話せばいいのかわからない。
「えっと…中学の頃に、私も1回だけいじめにあって…。」
「は?」
実は、いじめの件はあえて春樹には言わなかった。言ったらまた逆に大変なことになると思ったから。