第4章 体育祭
家に帰るまでの短時間だったけど、いろいろなことを話せた。
「ありがとう、わざわざ家の前まで運んでもらっちゃって…。」
「いや?当たり前のことしただけだし。」
「…でもありがとう。」(当たり前…なのかな…?)
「あぁ。じゃあ、俺はここで」
「あー、今?別に出れねぇこともねぇけど。」
翔真が帰ろうとしたとき、春樹が家から出てきた。
「…あ。」
「ひっ…。」
「…」
翔真は春樹を見るなり、怯えた声を出した。春樹は電話をしていた。私は玄関を開け、お米を家まで運んだ。そのあとすぐにまた外に出た。
「し、下まで送るよ。」
私は翔真にそう言った。翔真は無言で私についてきた。
「…怖。俺やっぱ無理。」
「そんな怖くないと思うけど…。」
「菜月だけだろ、そんなこと思えんの。」
「翔真がビビリなだけじゃ…。」
「はぁ!?お前…!」
「ご、ゴメンなさい…。」
仲良くなれた気がする。その証拠に、お互い呼び捨てで呼んでいる。
「じゃあ、また明日ね。」
「おう。あ…あのさ…。」
「…?」
「隣の席の…佐藤…?って…知ってる?」
「え…あ、うん。友達。」
「……連絡先とか知らねぇ?」
「あー、ゴメン、聞き忘れちゃって…。」
「あ…そっか。んじゃ、またな。」
「バイバイ。」
これはもしかして…!
「…」(脈アリ…!?)
家に帰るまでの道のりで、そんなことを考えた。
「…随分仲良さそうだったな。」
「!…春樹…電話は?」
「終わった。」
「そっか。」
「アイツ誰?」
「え…?同じクラスの…ほら、春樹の前の席の子。翔真。」
「…チッ…。」
「…」(えぇっ…何が気に食わなかった…?)
舌打ちをされ、顔が青ざめていく。