第4章 体育祭
麻里を助けてあげたい。でもどうすればいいのかわからない。
先生に言ったところで、麻里の被害が大きくなったら…?
もっと良い方法はないのだろうか。
「っ…。」
「…お前は昔から人に優しすぎんだよ。自分から面倒事に首突っ込んで、何も出来ない自分に苦しんでんだろ?」
「…」
そんなの、言われなくたってわかってる。
ただ、どれだけ自分が無力であっても、人を助けたいと思って何が悪いの?
「…の…?」
「あ?」
「人を助けたいって思って何が悪いの!?」
違う。春樹が悪いわけじゃないのに。
春樹は、何も悪くないのに。
「だから、悪いなんて一言も」
「たとえ関係なくても、友達になったんだから、助けたいと思って当然じゃん!」
「…じゃあ赤の他人だったら?」
「!…」
「赤の他人でも助けたいって思うのかよ。道端で、誰かに水をかけられてたとして、見て見ぬふりすんだろ。中途半端な気持ちで友達なんか作るからそんなことになんだろうが。」
わかってる。わかってるんだけどさ。
「っ…春樹にはわかるわけない!」
気づいたら私は泣いていた。頬が熱くなって、口の中まで熱く感じて…。
私は走り出した。
「ちょっ…おい!」
「っ…!」
春樹の声なんか無視だ。
「…」
家に帰って後悔した。春樹は何も悪くないのに。
「菜月、春樹君が来てるけど?」
「…」
ドアの向こう側からお母さんの声が聞こえた。でも無視した。
何も出来ない自分が嫌になって、無力な自分に嫌気がさして…。