第1章 最悪最凶
「…はぁ…。」
私は小さくため息をついて席を立った。向かった先は、もちろん春樹のところ。
「春樹、ちゃんと書かないと。」
「…」
「黒板の文字書くだけだよ?」
「…」
私がそう言うと、やっとシャーペンを持ち、ノートに書き始めた。
そう、彼は驚くことに、字が綺麗なのだ。これで性格が良ければ絶対にモテる。顔は整っているし、勉強もでき、スポーツ万能。完璧ではないか。
私も席に戻り、ノートに移した。
「菜月って凄くね?」
「わかる、なんであんなんと仲良くできんのかな。」
「怖いのにね〜。」
「…」(聞こえてますよ、そこのお方達。)
それから……。
「…お腹すいた。」
「朝メシ食わねぇからだろ。」
「だって、春樹がもっと早く起こしてくれれば」
「あ?」
「…なんもないです。」
ただ、聞こえていたらしく……。
「いひゃい!いひゃいよ!」
頬を引っ張られた。
「ごめんなさいは?」
「ごへんははい!」
「ったく。朝メシ食いたきゃ自分で起きろ。」
春樹はお母さんの作ったお弁当を持ってきて食べている。春樹のお母さんの職業は弁護士。仕事も忙しいはずなのに、春樹のことをしっかり思ってくれていて、お弁当も毎朝作っている。春樹のやりたいようにやらせてくれている。でも怒った時はホントに怖い。
「…あれ…あれ!?ない!!」
せっかくの昼休み。お弁当がない。
「…春樹ぃ…お弁当忘れたぁ…。」
泣きたい。朝食も食べず、昼食も食べないなんて…。