第1章 最悪最凶
「…」
高校生、というと、だいたいの恋愛小説や漫画で主人公やその相手の子に設定されている学年だと思う。でもそんな夢のような校舎などあるわけもなく…。
屋上は立ち入り禁止だし、昼食も必ず校舎内で食べなければならない。物語の中と現実では世界が違う。
「じゃあここまでをノートに書いて持ってきてください。私に見せた人は自習しててくださーい。」
若い女の先生。男子生徒は見とれている。でも女子からの評判は悪い。
「可愛いよな〜、佳奈ちゃん先生。」
「わかる〜。」
「どこがいいのよ、あんなやつ。」
噂だと体を売ってお金を稼いでいるのだとか…。
「…」
「でさ、この前佳奈ちゃん先生が」
男子の声が止まない。その時だった。1番後ろの方から机を蹴る音が聞こえた。
「うるせぇよ。」
「!…」
静まり返った教室。こんなことするのはただ1人…。
「よ、吉田…。わ、悪ぃ…。」
「さ、さあ、吉田君も書こうか。」
みんなは苗字で呼んでいる。
「うるせぇよ、クソババア。」
「なっ…!まだ24です…。」
小声でそう呟いた。
春樹が口を開いたため、教室の空気が悪くなった。その張本人は…というと、ポケットに両手を入れ、窓の外を見つめている。授業中もこうやって授業に参加しないのに、頭良いのはおかしい。家でも勉強してる様子なんてないのに。
「…」
春樹の生き方に口を出すつもりはない。でも暴言吐くのはどうかと思う。
「よ、吉田君、テストに出るから、書いて持ってきて…ほしいなぁ…?」
「…」
無視。