第1章 最悪最凶
操作の方法を教えていると、酔っぱらいの女性が言った。
「ん〜!わかった〜!2人って付き合ってるでしょ〜!?」
「!…」
静まり返るその場。
「違うのぉ〜?」
「梨沙、お前は…。」
「はい、俺は先輩と付き合っています。なのでこの関係は内緒にしてくれますか?お客様。」
「!…」
春樹も目を見開いていた。
「ちょっ…!」
私は後輩君の腕を掴んで控え室へ連れていった。
「な、なんであんなこと…!」
「どうせ酔っぱらいのお客さんなら覚えていないと思って。」
「だ、だからって…!」
実はこの後輩君とは仲が良い。シフトが被ることがほとんどで、話しているうちに仲良くなり、同い年ということもあり、2人の時は敬語は使わないで話している。
ちなみに、後輩君の名前は、上野光太郎。
「じゃあ俺と付き合う?」
「え…?」
「そうすれば嘘じゃないってことになるでしょ?」
「そ、そうだけど…。」
そうだとしても、光太郎は私なんかでいいのか。
「光太郎にはもっと良い人がいるから。」
「俺には菜月しかいない。」
「!…な、何言ってんの…。」
苦笑いを浮かべた。
「菜月…俺は」
光太郎がなにか言おうとした時、閉店作業の準備を始める音楽が流れた。
「!…閉店作業行こうか。」
「っ…はい。」
外に出ている商品が乗った台車を閉まったり、ベンチを閉まったりする閉店作業。春樹が待っていた。でもまだあの女の人と一緒にいた。