第2章 わん!
『もう朝だよー! 皆起きてー!』
朝から声高らかに叫べば、私は手にしていたフライパンに御玉をぶつけて鳴らす。すると二階からガタゴトと物音を響かせては、皆リビングに降て来る。
そう、これが立花家の日常です。
「朝から元気だね、おはよう真白」
最初にリビングにやって来たのは、立花家の二男、戌里(かいり)兄。
ふわっと欠伸をしているが、肩まで伸びた金髪に、翡翠の綺麗な瞳を持つ24歳の小説家。性格はおっとりでそのせいか、あまり外出もしない。だから肌はめちゃくちゃ白い。
そこは私と取り替えて欲しいところだ。
『おはよう、かいうぶっ!』
戌里「あらら。おはよう蒼生」
「おっはよー! 戌里兄、真白!」
いつも、いつも、全く。
『蒼生兄、朝から元気過ぎでは!』
「まぁな、真白を見たら元気になった!」
どんな理屈!?
いきなり私に抱きついて来たのは白銀のサラッとした髪に琥珀色の綺麗な瞳を持つ、五男の蒼生(あおい)兄。
けど、容姿は大人びていて背も戌里兄とあまり変わらない。そんな彼は17歳で高校生だが、今は売れっ子ユーチューバーだ。
「朝から暑くるしいんだけど?」
戌里「おはよう、満ちゃん」
『あっおはよう満ちゃん』
蒼生「やだもう、妬かないでよー満ちゃん」
「だからちゃんを付けるな!」
そう声をあげながらリビングに来たのは六男の満(みちる)。満は私と双子で同じ高1の16歳。青い髪に彼もまた琥珀色の瞳を持つ可愛らしい男の子だ。
満はバイトしてないけど、弓道部に所属している。
「お前ら朝からわんわんうるせーぞ」
満「わんわん?」
蒼生「わんわん!」
戌里「多分ぎゃあぎゃあって言いたいみたいだね。おはよう理央」
『おはよう、理央兄」
「ああ、おはよう。満と蒼生は後で絞める」
満、蒼生「何でだよ!」
リビングに来てすぐテーブルの椅子に座る彼は、三男の理央(りお)兄。
黒髮に紫色の綺麗な瞳を持つ21歳の大学生。結構クールで冷たい感じはあるものの、天然人。バイトは近くのカフェで働いている。
「あれ、皆もう集もうてるやん」
わちゃわちゃしているなか、最後の一人が降りて来た。