第4章 魔女の正体
ナマエの元いた世界では、妖魔という人間の内臓を食らうバケモノが存在した。妖魔は優れた身体能力と人に化けることから、退治することはほぼ不可能に近かった。それを変えたのが、ある組織だった。
「その組織は、妖魔に対抗する手段として、戦士を作ったんだ」
「戦士?」
「大剣を携えた、銀眼の戦士をね」
妖魔に家族や村を襲われて孤児となった女子を組織は引き取り、戦士へと育てた。
その身に憎き妖魔の血肉を取り込むことによって、妖魔を倒せる存在になれるのだ。
「皮肉なものだな」
「本当に。妖魔を憎めば憎むほど、その血肉で生かされている自分という存在も嫌いになりそうだった」
そうして作られた戦士は、通常ではありえないほどの身体能力と妖力を得ることで、妖魔を倒すことで生活しているのだ。
「少食なのも、並外れた身体機能によるものさ。私たちは1週間飲まず食わずでもなんの支障もきたさない」
「なるほどな。それにしても、妖力とはまた魔女にぴったりだな」
「妖力は自分の中の妖魔の力のこと。普段は出していないけど、妖力を解放すればするほど身体能力は上がる」
「ほう、是非その状態で手合わせしたいものだ」
「勘弁してくれ。鷹の目相手じゃ、限界まで妖力開放しても勝てるかわからないよ」
「ふっ、おれはその妖魔とやら以上にバケモノというわけか」
ミホークが笑いながら言ったその言葉に、ナマエは至極真面目に頷いた。
ナマエはミホークより強い妖魔など見たことがなかった。まだミホークの戦いぶりを見たわけでもないが、分かるのだ。妖力の様に強さを感じることができる。
「ミホーク、あんたはバケモノだよ。間違いなく」
「おれは主と違って正真正銘の人間だ」
普通の人間がミホークの様に強いとは、俄かには信じられない。今までナマエがこの世界で相手にしてきた海賊や、つるの部下などは確かに普通の人間で、妖力解放するまでもなかった。
この世界には、一定数バケモノ並みに強い者がいるということだろうか。