第4章 魔女の正体
「飯にしよう」
太陽が傾き海が赤くなり始めた頃、ミホークが夕飯の用意を始めた。
用意といっても、つるから貰った缶詰とフォークを投げて寄越しただけだったが。
「船での食事は味気ないが、陸に上がればまだマシになる」
缶詰の中身を頬張りながら、ミホークが少し申し訳なさそうに言う。気を使わせてしまって、ナマエの方が申し訳なくなってくる。
「いや、私は何でも貰えるだけありがたいよ」
ナマエも缶詰を開けて食事を始めた。中身は鶏肉だった。缶詰にしてはとても美味い。
一口、二口、三口、美味しいが、四口目を飲み込んで食べる手を止めた。ふーっと、息をつく。
「どうした、口に合わないか」
ミホークは既に食べ終わり、二つ目の缶詰を開けようとしていた。
「いや、美味しいよ。ただ、もう腹がいっぱいなんだ。残りで悪いが、食うか?」
ミホークは目を眇めた。差し出された缶詰を受け取りながら、ナマエの華奢な身体を見やる。食の細さ故の体つきなのか、この体つき故の食の細さなのか。
ナマエと会ってからずっと頭にあった質問が、思わずミホークの口から飛び出した。
「主は、人間なのか?」
ずっと思っていた。あの大剣を振るうには、ナマエの体には筋肉が明らかに足りない。そしてこの食事量では、大剣を振り回して戦う体力を作り出せない。何より、ナマエが拘る人間とバケモノの境界線。そもそもバケモノとはなんなのか。すべての疑問が詰まった質問だった。ナマエは、人間なのか。
「私は人間として生きているが、周りからそうは見られなかった」
ナマエはつぶやくように語り始めた。自分が大剣を背負うことになった理由を。
「私は、半人半妖なんだ」