第50章 無常 〔山鳥毛〕
「小鳥、元気か?」
最近、本丸に顕現した山鳥毛が審神者の部屋を覗く。
「まぁ、山鳥毛さん」
横になっていた審神者がよいしょ、と起き上がるのを見て、山鳥毛は急いで審神者の側により起き上がるのを助けつつ言う。
「ああ、すまない。かえって起こしてしまったか」
「いいえ、今日は調子が良いんです」
真っ白な細い髪の毛を軽くひとつに結んで、小さい背中を少し丸めて山鳥毛に礼を言う審神者は、往年はかなりな霊力を持ち数々の武功を男士たちと立ててきたものの、今はすっかり年を経た病がちな老女だった。
「山鳥毛さんには申し訳ありませんね」
審神者は座り直すと山鳥毛へ向かって頭を下げ、何に対して謝っているのかわからない山鳥毛は首を傾げる。
「私がもう年でからだもすっかり弱ってしまい、ろくに審神者としての仕事が出来なくなっているからです。このような本丸に顕現してしまい、山鳥毛さんのちからを発揮させる事が出来ずに申し訳ありません」
この本丸は病がちな審神者が審神者としての使命を果たせなくなってることから引退し、新しい審神者を迎えることになっていた。
ただ、新しい審神者が本人都合ですぐ本丸に入れないことから、引退する事が出来ず審神者として本丸を統括しなくてはならなかった。
「いや、私はどの本丸に顕現していても、その時私に出来る事をするだけだ。それに私は若くないから貴女のような年寄りの審神者と話しが合うようだ」