第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
目の前に突然現れた見知らぬ恰好をした五振りに、フロイドは毒気を抜かれ呆然と目の前の光景を見る。
和泉守たちはそれぞれが長さの違う刀を鞘から抜くと構え、向かってくる遡行軍を鮮やかに斬り付ける。
その都度斬られた遡行軍の血が飛んで戦闘服にそれが飛び散るが、男士たちはそれを気にせず次々と斬っていく。
「…ったく、おまえら、一般の人を巻き込まないでよね」
叫びながら斬り付けるのは加州清光。
みるみる青い羽織が赤く染まるのも気にしないのは大和守安定。
「肥前くん、罠を作っておこうか?」
呑気に言うのは南海太郎朝尊で、肥前があからさまに嫌だと鼻にしわを寄せる。
「先生、それはここには不要だ」
「そうかい?残念だなぁ」
背中合わせになった肥前と南海は、向かう遡行軍を左右に斬る。
「…やるじゃん」
フロイドが座り込んだまま楽し気な声をあげ、レオナとラギーはその声にフロイドが落ち着いたと気付く。
「これがカタナを使った戦いかたか…」
レオナは魔法の効かない武器を使った戦法をじっと見る。
そこへ数体の時間遡行軍が肥前たちの近くにいるレオナたちを目掛けて襲い掛かるが、肥前たちは他の遡行軍を相手にしていて間に合いそうになかった。