第44章 ××しないと出られない部屋その3 〔五虎退〕
「開かないです…」
おどおどと小さい声で五虎退くんが言う。
「…どうしたの?」
虎さんに何やら五虎退くんが言うと、虎さんが大きなからだを戸口にバンとぶつける。
「ちょ…どうしたの?」
慌ててもう一度聞くと、五虎退くんは申し訳なさそうな表情をこちらに見せる。
「あの…開かないんです…」
私はまさか、と近付き戸口を開けようと引き戸を引くものの、やはり開かない。
「あれ?ここ、建てつけ悪くなってたっけ…?」
本丸自体の築年数はきっと相当古いから、どこか悪くなってきているのかもしれない、そう思い他の男士を呼ぼうと常に持ち歩いている端末を袂から取り出す。
「…あれ?なんで?」
本丸内ならどこにいても繋がるはずの端末が、全く反応しない。
「え…故障…このタイミングで…?」
今朝、動作確認した時は何とも無かったのに、いったいこんな状況でおかしくなるなんて、私は困ったな、と思いつつ端末を袂にしまった。
「五虎退くん、ごめんね。端末も壊れてしまったみたいで…そのうち誰か探しにきてくれると思うから…」
私は五虎退くんを心配させないように努めて明るい声で言った。