第39章 出会いは不思議を運ぶ 〔乱藤四郎〕
主さんの近侍としてお仕事を手伝った時、不思議な話しをぼくは聞いたんだ。
「人魚に会った事があるの…?」
人魚ってあれだよね、上半身はヒトだけど下は魚っていう不思議な生き物。
「どうやって会ったの?って言うか、人魚って存在するの?」
ぼくは驚いて主さんに質問を投げかける。
「本当に一度きりなんだけどね…」
そう言って話してくれた主さんの話しは、簡潔させるとこういう事だった。
こどもの頃、家族で海に遊びに来た主さんは、浮輪を使っていたものの波にながされてしまい、自力で陸へ戻れなくなってしまったそう。
どうしよう、死んじゃう、助けて、と泣いていたら、海の中から人魚が現れて、陸近くへ運んでくれた、というもの。
「なんで人魚ってわかったの?」
「そりゃあ上半身はヒトで、下半身は魚だったもの。いくらこどもだったとは言え、間違える事は無いよ」
「海の中にいたら、下半身見えないんじゃない?」
ぼくの突っ込みに「うん、確かにね」と言って、主さんは続ける。
「でもね、運んでくれたのがヒトの手じゃなくて、タコの足だったんだよね」
タコ?タコってタコ焼きのあのタコ?
ぼくのドン引きした表情に主さんはくすくす笑う。