第7章 回想抄その1 〔加州清光/大和守安定〕
沖田総司が結核で亡くなったのは小説で知っている。
新選組が崩れていく様を見なくて良かったのかもしれないけれど、安定と清光というくせがあっても大切にしてくれた持ち主がいなくなるのは、二人にとって大きな心の傷になってないかな。
私は二人の手をぎゅっと握って言う。
「沖田総司はもういないけれど、私は二人を大切に思ってるからね」
二人は目を丸くする。
「二人がどんな刀としての生き方をしてきたか、私にはわからない苦労をたくさんしてると思うけれど、私がここに審神者としている以上、みんなが傷付かないように努力するね」
二人は呆気に取られた表情をしていたけれど、ふわ、と笑みを浮かべた。
「ありがとう、主」
私がどうしてここに選ばれてきたのか、それは霊力が少しあるから。
でもそれだけじゃなくて、傷付いた刀剣の付喪神さまたちを癒して、私がいつかいなくなっても次の審神者様に可愛がってもらいたい、そう思うようになっていた。
神さまだってこうして心がある。
刀の頃の持ち主を大事に思って長い時を超えてきたのだから、その気持ちを大切にして出陣まで穏やかな気持ちで過ごせるような環境をつくるのも、それも私の使命なのかな、と思う。
「じゃ、私、新しい刀の顕現をしてくるね」
立ち上がって安定と清光に話すと、二人共「がんばって」と頷いて手を振ってくれた。
私は決意する、彼等を守ろう。
彼等の刀として生きてきた時と、顕現して戦わなくてはならない運命でも、長い時間をいつまでもその姿を生き抜いていく彼等に、ごくひとときでも穏やかに過ごしてもらおう。
私はそうして新しい刀を顕現しに足を踏み出した。
<終>