第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「兄者の髭切が、主さんと同衾しているらしいぞ」
「はぁ?どういう事だ?俺は兄者に主を起こしてくるよう頼んだだけだぞ?」
いぶかしげな顔をして膝丸は返すが、前田の言葉を信じている男士たちはやいのやいのと言う。
「いや、前田が自分の目ではっきり見た、というんだ」
「前田は嘘をつかないからな」
「…ちょっと待て、俺が見て来る」
言われて膝丸が審神者部屋へ行こうとすると、廊下の先からゆったりと当の鬚切が歩いてきた。
「兄者!」
膝丸の掛け声に鬚切はのんびりと広間へ来ると、じっと鬚切を見つめる一同に向かってにっこり笑って言った。
「おや、みんな、おはよう。主を起こしにいったはずが、主の寝顔が愛らしくて、一緒に布団に入って寝てしまったよ」
この瞬間誤解が解けたのだが、加州はぶつぶつと不服そうな表情を消さない。
「なんで鬚切が布団の中に普通に入るんだよ。初期刀の俺でさえ、布団に同衾した事ないのに」
それを聞いた大和守安定がさらりと言う。
「だったら清光が夜這いにいって、主をモノにしちゃえば良いだけでしょ」
ぽんと片手に作ったにぎりこぶしを、もう片方の手のひらで置いて、加州は頷く。
「その手があったか。他の男士に取られるなら、俺が主の初めてになりたいし」