第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「主、起きてるかい?」
朝、寝起きの悪い主を起こしに行く。
ぼくも寝起きは正直良くは無いのだけど、名前は…えーっと、弟の肘丸に主を起こしてくるよう頼まれたんだ、仕方ないよねぇ。
「主?開けるよ」
返事が無いのでもう一声掛け、障子を開けると、穏やかな表情で眠る主の姿が目に入る。
「気持ち良さそうだなぁ」
ちょいと失礼、とぼくもその布団の中に入ると、主の温もりで暖かい布団が心地良い。
主の可愛い寝顔を見ていたら、ぼくも何だか眠くなってくる。
「主様、起きていらっしゃいますか?」
短刀の声がし、ふと、審神者は目を開けるものの、何だか薄暗い。
まだ起きるには早い時間じゃないのか、とぼんやり周囲を見ると、明るい光が部屋に射し込んでいるのがわかり、どういう事かとよくよく目の前を見る。
誰か布団の中にいる、と気付き、息を呑む審神者は、何度も瞬きしてその誰かが鬚切と気付く。
「ちょっと…鬚切さん?」
ゆさゆさと肩を揺すると、うーん、とちょっと声を漏らし、あぁと寝起きの掠れた声がすぐ隣で聞こえ、その色気を含んだ声に背中がぞくりとした。
「主様、失礼します」と入ってきた短刀は前田で、審神者と鬚切が同じ布団にいるのを見て、「しっ、失礼しましたっ」と慌てて障子を閉めて出て行った。