第33章 すいーつ王子の甘い指導 〔小豆長光/R18〕
大の男、それも甲斐の虎と恐れられた武田信玄が、実は甘いもの好きで家臣の真田幸村に怒られていたなんてエピソードは、それまでのイメージを覆すもので何となく人間味を感じて審神者は笑ってしまった。
「ふふ…そういうの、面白いね。遠い昔の有名な武将が身近に感じられるよ」
すると小豆は目を細めて言う。
「きみたち人間には遠い昔なんだね。私たちには一瞬でしか無いような年月なのだが…」
ヒトと刀の年の動きの差を痛感する主と小豆だったが、審神者はそれを振り払うように笑みを浮かべて小豆を見る。
「私は人間だから男士の皆さんと同じには生きられない。だから出来る事は、今、皆さんが幸せでいられるような本丸にすることだと思ってる」
そう言うと小豆はじっと主を見つめ、主は言葉を続ける。
「だけど戦いは避けられないよね。だってその為に皆さんが顕現されてるんだもの。だから闘ってもらわないとならないからこそ、それ以外ではここが皆さんの安らぎであるよう、私が審神者でこの本丸の主として存在している限りはそうしたいと思ってるんです」
主が口を閉ざすと小豆はゆっくりと微笑んだ。
「ありがとう。きみが主で良かった。私たちはきみのように私たちを大切にしてくれる主を持って幸せだ」
小豆に言われ、その言葉に嬉しそうに笑う主の笑顔はまるで八重桜が咲いたようなほわりとした柔らかい笑顔で、初めてそれに気付いた小豆は、気付かれない程度に顔を赤らめた。
「さぁ、ではそんなきみに私はスイーツを作ろうか」
目的を思い出し一人と一振りで台所へ行くと、既に夕飯の準備を始めていた当番の堀川国広が大きな鍋に野菜を切って投げ込んでいた。
小豆がそこへ声を掛けて台所の隅を借りても大丈夫か聞く。